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鳥取県Mホテル

 毎年、最低でも一回、多ければ三回ほど鳥取出張がある。

 鳥取といえば、岩ガキ、鳥取牛、カニ、のどぐろ、モサエビ……おいしいものだらけの土地なので、藤白個人も大好きな出張先です。

 

 ホテルもビジネスホテルというよりも、ちょっとリゾートチックな雰囲気で、朝食も美味しく、メニューも豊富。

 毎回、快適にすごしておりました。

 

 で

 

 す

 

 が

 

 たまーに

 ごく

 たまーに

 

「あれ?」

 

 と思うことがあったんです。

 

 例えば……

 

 鳥取の夜は大抵、飲んだくれて部屋に戻るわけですが──

 ルームキーを机の上に置きっぱなしにしておいて、忘れて出てしまったと思いきや、財布の中に入っている。

 なんていうラッキーなことは多々あり。

 

 それだけでなく、藤白は、喉が弱いので、エアコンを消して寝ることが多いのです。

 ですが、たまにお風呂から上がって、暑いとエアコンをつけてしまう。

 そのまま爆睡することがあるのですが……

 

 翌朝、消えていることが多いんですよね。

 

 最初は自分で無意識に消していただけだと思っていたのですが、

 ある日、パソコンに向かったまま寝ていたこともあったんです。

 

 そして、明け方、椅子に座ったままの体勢で起きたわけですが……

 

 やはり、エアコンが切れていたんです。

 しかも、何故か肩にカーディガンが掛けられていた。

 

藤白「誰かが親切心でやってくれたのか?』

 

 藤白を起こすことなく、体調を気にしてくれているような優しい対応。

 相手が幽霊だとしても、恐怖心よりも、好奇心と感謝の気持ちが募ったわけですが……(←怖がれよ)

 

 

 ふと、何気なく。

 電源を入れていないテレビを写真に撮ったところ

 

 何故か襖のようなものが写っていることに気がついた。

 テレビの目の前にはベッドと壁しかない。

 

 襖のようなものは何一つない。

 

 バスルームの扉が写り込むような角度ではないし、

 もしも写り込んだとしても、バスルームの扉はドアノブがあり、前後に開くタイプだ。

 引き戸ではない。

 

藤白『もしかして……この襖から何かが出ているとか?』

 

 そういえばこのホテル。

 地元の人たちの間では『出る』と有名なんだそう。

 確か、7階か8階のどちらかだったと思うのですが──

 女の人の霊を見たという人が多いのだとか。

 

 もしかしたら、この霊。

 

 実は、見えない襖から出てくる親切な異世界人なのかもしれません。