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インターホン

 最近、友人が引っ越しをした。

 まだできたばかりの新築マンションで、一人暮らしだというのに、間取りは3LDK。

 駅からは少し遠いものの、車で移動することの多い友人にとっては、とくに問題はないと言っていた。

 荷物の整理も終わり、ある程度落ち着いた頃に新居に招待してくれると言っていたのだが──

 

 引っ越し日の翌日。

 すぐに連絡がきた。

 

藤白「もう荷物の整理終わったの?」

友人「……いいや。部屋にいると、ピンポンピンポンうるさくて……」

藤白「え? インターホン、壊れてるの? だったら管理人に相談しなよ」

友人「インターホンは問題ないんだ……」

藤白「じゃあ、住民のいやがらせ? でも、そのマンション。まだ売りに出されたばっかで、半分以上空き室だったよね?」

友人「住民の嫌がらせじゃないんだ」

 切羽詰まったような声からして、嘘や冗談ではなさそうだ。

 けれど、インターホンは壊れていない。

 住民の嫌がらせでもない。

 だったらなぜ、ピンポンピンポンうるさいのか。

藤白「もしかして、ストーカー……」

友人「インターホンが原因じゃないんだよ。甲高い声でぴんぽーん、ピンポーンって耳元で言われるんだよ」

 藤白の声に被せるように、友人が叫んだ。

 その言葉を聞いた瞬間、ゾワッと鳥肌がたったのはいうまでもない。

 友人はその後、そのマンションは賃貸収入用に使用し、自分は別のアパートに引っ越したようだが……

 現在、そのマンションに住んでいるご家族には、いまのところ異常がないという。

 では、あの「ぴんぽーん」という声は……?

 

 思い浮かんだ言葉をそっと胸にしまった藤白なのでした。